【経緯】
Aさんは所有する甲土地建物(時価2000万円程度とします)を、B企業から譲って欲しいと頼まれました。
Aさんは代替土地建物を用意してもらう事を条件に承諾しました。
B企業は代替に乙土地建物(時価4000万円程度とします)を用意しました(近所の空地を購入し住宅を新築する予定)。
Aさん、B企業共に、Aさんの出費をゼロ若しくは小額にしたいと思っています。
【質問】
1.Aさんは甲土地建物を4,000万円で売って乙土地建物を4,000万円で購入した場合、AさんはB企業から贈与を受けた事になりますか?
2.上記1で、贈与税がかかる場合、B企業が代わりに税金を払う事は可能ですか?予め税金負担分も上乗せして4,000万円+αで売却するといった考え方はおかしいでしょうか?
3.Aさんは甲土地建物代金としてB企業より2,000万円を受領し、更に2,000万円+α(Aさんが次年度に支払う増税分相当額)を移転費用や承諾料といった別の名目で受け取る事は可能ですか(常識を逸脱していますか)?
以上、B企業担当者との会話より。
ですので、質問は全て、B企業内で承認されるか?税務署で後から何か言われるか?の視点でしています
とりあえず、回答の前提条件として、
① Aさんは自然人で、Bは法人(事業年度1年)である。
② AとBとは、資本的関係、人的関係において特筆すべき点はなく、かつ、通常の商取引においても関わりがない。
③ Aさんは、甲不動産を5年超保有していた。
④ 甲不動産は居住用の財産であった。
⑤ Bは、住宅造成のために甲不動産を取得するのではない。
ということにしておきましょう。
その上で、まず、本契約の解釈から考えてみましょう。
<交換契約?>
よく、等価交換などといいますが、税務上の交換の特例の条件を満たすのはなかなか難しい。本件でもダメです。その理由は、乙不動産が交換のために用意された資産であること。乙不動産の保有期間が1年未満であること。時価の差が大きすぎること。の3点です。
<売買契約?プラスアルファ?>
そうだとすれば、契約の形式にかかわらず、本契約は売買契約を中心に考えざるを得ません。
ここで、次の問題が発生します。
売買金額は①4000万円なのか、②2000万円なのか?
① とすれば、Aさんはほとんど無税でしょう。居住用財産には3000万円の特別控除があるからです。また、10年保有であれば、軽減税率の適用もあります。かつ、Bは、帳簿上、4000万円の金額で載せることができます。後で説明しますが、これは両者にとってメチャメチャお得です。
② とすれば、差額2000万円は法人から贈与を受けたことになります。税額分を上乗せするとさらに贈与が膨らむことになります。乗せること自体は問題ありませんが。法人から個人が贈与を受けた場合には、これは贈与税ではなく、所得税の一時所得というものになります。そして、忘れちゃいけないのが、Bさんの取り扱いです。Bの帳簿上、2000万円は「寄付金」なる経費として記帳されることになるでしょうが、これはほとんど法人税の計算上は利益とみなされてきます。
はて?それなら、①でいいじゃない!とお思いでしょうが、時価で50%の差額の開きは、税務上はちょっとリスクがあります。実際に課税されるか課税されないかは五分五分かも知れませんが、仮に租税回避とみなされれば、後でたいへんなことになります。そして、この「たいへんなこと」は、決してありえないことではありません。なぜなら、税務署がこれを認めてしまうと、脱税天国になってしまうからです!簡単に、説明しましょう。
決算時に利益がたくさん出たとしましょう。
社長「わあ、たいへんだ。税金が多すぎる!」
悪い税理士「心配ご無用。土地をわざと高く買って、すぐ売ればいいのですよ。そうすれば簡単に赤字を作れます。」
そうなんです。時価2000万円の不動産を4000万円で買っておいて、すぐ2000万円で売れば、簡単に2000万円の赤字が作れます。
調子に乗りすぎました。もし、間抜けな税務署がこれを見逃すと、租税正義が貫けなくなってしまいます。
したがって、税務署は、目を皿のようにして、一生懸命このようなタックスシェルターを監視しているというわけです。
② 構成では、B法人で(規模等によりますが)800万円相当の税額を生じる可能性があります。Aさんには、仮に税額が30%の人だとすれば、300万円相当の税額を生じる可能性があります。個人は他に住民税も考えておく必要がありますね。不動産取得税もあるし、登録免許税もあるし、エトセトラ。
良い税理士「寄付金は、あまりにひどい。土地をどうしても売却してもらいたいという意味で払ったのだから、寄付というよりは交際費だ。」
交際費ならば、B法人の課税をもう少し下げることができます。最大160万円を減額できます。それでも640万円!
この辺でまとめておきます。
質問の回答
1、贈与を受けたと税務署で認定される確率50%。もう少し評価差を小さくできないか。そうすれば、現実味が出てくるかも。
2、Aの税金をBが払うことはなんら珍しいことではありません。払った金額は、贈与の上乗せとなります。おかしくはありませんよ。
3、そのような取引もあるやに聞きます。構成の仕方によってはうまい方法になる可能性があるでしょう。
以上です。
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