東大の大村教授の「家族法」を読んでいると、世の中の養子縁組は、今やその大半が財産関係を目的とするものなのだそうだ。
昔は、何か、秘めやかなニュアンスを漂わせていたこの「養子」という言葉も、もはやすっかり趣きを変えた。
ご存知の通り、養子になると、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する(民法809条)。
嫡出子なんて難しい!と思われる方のために、説明をしておくと、普通の結婚した夫婦から生まれた子供と同じ扱いになるということだ。さて、結婚した夫婦から生まれなかった子供は、というと、これが、「嫡出でない子」、古くは非嫡出子と呼ばれ、相続において相続分を半分に制限されている(民法900条4号但書)ことを皆様も伝え聞いているところであろう。
以前、最高裁の大法廷でこの規定が差別であり、平等権を定めた憲法14条1項に違反するのではないかが問題とされたが(最大判平成7年7月5日)、現行民法が法律婚を原則とし、同棲などの事実婚を例外としていることから、何かしらの差異が設けられることは制度的にやむをえず、かえって非嫡出子に2分の1を与えて保護しているのだから、差別とまではいえない、という判断がなされた。
自由恋愛が盛んな今の時代に、いや、人工授精(artificial insemination)や体外授精、さらには代理母(subrogate mother)までが現れた今、法律婚だ、事実婚だ、などと言われても、いまさらの感が否めないのだが、ともかく、現在もこの法律は変わっていないわけだ。
さて、私は考えた。民法のどこを読んでも、自分の子を養子にしてはいけないとは書いてない。
それならば、非嫡出子で云々といわれる前に、お父さん、お母さんに養子にしてもらったらどうだろうか。
そうすれば、縁組の日からあなたは晴れて嫡出子の身分を取得できる。
判例データベースを調べてみると……。
あった!
戦前の大審院の判決だが、非嫡出子を養子にした事件が見事にヒットした(大判昭4.5.2)。
背景的に、まだ家督相続の時代で、非嫡出子がたいへん蔑視されていた時代である。
長男と三男が二人とも非嫡出子で、女所帯であったが、長男の素行不良がひどく、三男だけを養子にして家督相続人に仕立て上げ、長男を分家させて追い出してしまったらしい。嫡出子でなければ相続人にはなれなかったので、長男が腹を立てて訴訟になったというわけだ。
この事件はともかく、当たり前のように非嫡出子を養子にすることが行なわれ、それを前提とした判決であった。
さて、現代に戻ると、一つ疑問が。
家督相続の場合には100%長男が相続したからよいが、現代では、法定相続分というものがある。非嫡出子がさらに養子になったら、いったい相続分はどうなるのであろうか?
①推論その1
孫を養子にして、代襲相続が起こった場合とパラレルに考えるとすると、
非嫡出子+嫡出子=1.5倍の相続分?
②推論その2
非嫡出子が準正で(民法789条)嫡出子に変化すると、単なる嫡出子の相続分だ。これと同じだとするならば、単に、嫡出子としての相続分に過ぎない。
さて、結論は?
このなぞが説ける方はスゴイかも。
教えてほしい人は言ってください。
ヒント?
ウーン…。神戸家庭裁判所尼崎支部の審判(昭和50年5月30日)が見つかりましたが、これを調べられる人はいないでしょう。それに控訴されているようですが、うちの判例データベースでもその控訴までは見えません。
私としては、何度も養子縁組をすることで法定相続分を変えることができるのでは法律的に問題が多いと考えます。それでは、900条が無意味になってしまいます。相続分を指定したければ、遺言によればよいのですから、そのような解釈は避けるべきでしょう。
したがって、私としては推論②を正解だと思うのです。さきほどの審判も理由はありませんが、私と同じ結論でした。
どうです?今日はおもしろかったでしょう?
いろんな本がありますが、税理士用の本にはこんなことはあまり書いてありません。
ご参考までに。
年末で、交通事故が増えてくる時期だ。他人のことはとやかく言えないが、心にゆとりを持たなければならない。私はクラシックやピアノ曲などを車中に流すように心がけている。
ともあれ、今日は損害賠償金についてちょっとだけまとめておこう。
所得税法の9条1項は、その柱書に「次に掲げる所得については、所得税を課さない。」と規定している。
いわゆる、非課税所得というものの規定だ。
その16号に「損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に起因して取得するものその他の政令で定めるもの」とある。わかりやすいように、交通事故の対人損害の場合に限定して、ざっくり表現すると、
保険金や損害賠償金のうち、身体の傷害や精神的苦痛に基づくものは、医療費、慰謝料、見舞金、逸失利益、など、名目を問わず非課税となるということになる(施行令30条)。
さて、「あれ?」と思われた方もいるかもしれない。「死亡」が含まれていないのだ。
自分の家族が交通事故の被害者になって死亡した場合はいったいどうなるの?という声が聞こえてきそうだ。
実は、この16号は、よく言われるように、怪我をしたのがかわいそうだから、弱り目に祟り目にならないようにしたというような甘っちょろい規定ではない。
この規定の趣旨は、自分自身が怪我をしたことにより、増加した医療費などの生活費や、収入の減少など、店主勘定の借方部分を想定して、これに相当する賠償金などをもらったことはその相殺にしかならないことに着目したものである。したがって、子供が半身不随になって、親が扶養費をもらうように、親にも損害が発生する場合にも非課税の適用があるわけだ(所得税基本通達9-20)。
さて、自分の家族が死亡して、損害賠償金をもらったらどうなるか。
医療費→明文はないが、立て替え金の収入であり、所得を構成しないと思われる。
慰謝料→これは、家族を亡くした心痛に対して受け取るものである。16号に該当して非課税となる。
見舞金→同上。
逸失利益→これは、何の逸失利益かよく注意しよう。算定方法を見ればわかる。死亡した本人の収入をホフマン方式やライプニッツ方式で計算しているのなら、間違いなく本人の生存によるうべかりし利益である。そうだとすれば、これを遺族がもらった場合、論理的に、
①本人が死亡前に(即死でもよい。最高裁判決がある。)非課税所得を獲得したと考えるなら、それを相続したことになる(相続財産となる)。
②直接遺族が受け取ると考えるのなら、一時所得である。
という二つのいずれかにしかなりえない。
そもそも、さきほどの本人生存によるうべかりし利益以外の逸失利益が直接に遺族に入るというのは、あまり考えにくいのだ。保証期間なしの終身年金の受取人が遺族であったようなケースしかありえないだろう。
なお、厳密なことをいうと、実は慰謝料も、何を慰謝するのかを法的には検討しなければならないのだ。死亡という想像を絶する苦痛を受けたことによる本人に対する慰謝なのか、それとも、家族を失った遺族に対する心痛の慰謝なのか。
本人に対する慰謝であれば、事故の瞬間に本人に非課税所得が発生し、それは本来は未収入金として相続財産になる。
遺族に対する慰謝であれば、直接遺族に非課税所得が発生する。
おっと、こんなことをいうと、あなたは冷酷無残な人だ、などと言われそうだ。
現実には、慰謝料の中身を詳しく分解するなどという実務はないから安心してほしい。
なぜって、内訳なんてよくわからないし、所得税はいずれにせよ、非課税だ。
相続税がかかる人は案外少ないのだ。
遺族の神経を逆なでしたくないので、なかなか触れにくい部分である。
言いたくても、言わなければならないと思いながらも、なかなか切り出せない。
時には、こんなつらい思いをすることもあるのが税務の世界である。
小売業の方、製造業の方、飲食店の方など、仕入が必須の会社の方々にちょっとヒントを。
今日のテーマは「検品」です。
商法には商事売買の特則がもうけられています。
今日取り上げようと思うのは、検品です。
検品なんて、面倒くさい、などと思っていませんか?
ダメですよ。きちんと品質、数量、キズがないか、などを確認しましょうね。うっかりと確認しないで納品伝票を受け取ってしまい、あとで問題があったらどうなるか知っていますか?
商法では、商人同士の売買において、買主が遅滞なく検査しなければならない旨を定めています(526条1項)。
このとき、数量、品質に問題があった場合には、直ちに売主に対して、問題点を通知しなければなりません(526条2項)。しないと、「商品を取り替えてくれ」「値引きしてくれ」「やっぱり買うのをやめます」「お金で精算してくれ」などという主張は、一切通らなくなってしまいます!
ちょっと見にはすぐに気づかないような品質の問題があったような場合にも、半年以内に発見して通知しないと同じことになります。
裁判例でも、①劣悪な石炭をつかまされてしまったのに気づかず、得意先に指摘されてから初めて気づいたという例、②農業用の機器がすぐにひび割れしてしまうことにあとで気づいた例があります。いずれも、時すでに遅し、大損害になってしまいました。
商事の売買は、大量に行なわれるので、民法の瑕疵担保責任のようなのんびりしたことを言っていると、おおもとの売主の責任が甚大なものになってしまいます。買主は専門的職業人なのですから、検品・通知義務くらい課したところでなんともないでしょう。売主に情報を与えて、すぐに善後策を講じることができるようにしたわけなのです。
このように、売主を保護するための規定をわざわざ設けたのですから、もともと粗悪品であることや数量が足りないことを知っていたような悪い売主は、保護の対象とならず、除外されます(526条3項)。
また、もしも契約を解除したときは、品物はちゃんと売主に返してあげなければなりません。市町村が別の場合には保管してあげてくださいね。もちろん、費用は売主もちです。生ものだったりするときは、売主に連絡の上、裁判所に手続をして売却しちゃって構いません(527条1項)。しかし、自分のものではないので、お金は法務局に供託します。