年末調整の時期が近付いてきた。
今日もお客様から質問があったので、これを機に、簡単にまとめてみたので参考にしてほしい。
源泉徴収税額表の丙欄のお話である。
当初の雇用契約において、雇用期間が(休日を含め)2カ月以下になっているケースで、算定単位が日給もしくは時給になっている給与の場合に、丙欄が適用されます。
丙欄によると、日額で9,299円に達するまでは源泉所得税がかかりません(平成19年1月以降分税額表)。
まとめると、要件は、二つです。
①雇用契約において2カ月以下の雇用期間が明定されていること。
②日給もしくは時給であること。
特に雇用の期間を定めないと、無期雇用となるので、丙欄が適用されることはありません。
また、継続雇用の結果、2か月を超えてしまったり、2か月を超えて働いていることに特に異議を述べなかったような場合には、超えた部分については自動的に乙欄適用者となります。これを排除するためには、扶養控除等申告書の提出により甲欄にする方法があります。
なお、支払時期については、民法において後払いの原則がある(民法624条)こと、労働基準法によって支払日を定めて1か月に1回は支払わなければならないこと(労働基準法24条)があるだけで、別に毎日支払う必要があるということではありません。
また、空白期間をあけて、再び丙欄を適用するということはかなり難しい。「客観的に雇用契約を打ち切ったと認められる事情」(審判例)が介在している場合にだけ、再び丙欄の適用がありうることになります。
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法人税法の22条3項には、損金となるものが列挙されている。
その中で、1号は売上原価を、2号は販売費及び一般管理費を、それぞれ規定しているのであるが、2号には「債務の確定しないものを除く」という言葉があるにもかかわらず、1号にはそのような規定はないのだ。
そこで、売上原価についてはいわゆる債務確定主義は働かないのか?という疑問が湧いてくる。
そんな論点が争われたのは牛久市の売上原価見積事件(最判平16年10月29日)である。
宅地の造成などは、「開発行為」と呼ばれ、県知事や指定都市の市長の許可が必要である(都市計画法29条)。市街化調整区域などで住宅建築目的などの場合や(同条1項2号)、市街化区域であっても規模が小さい場合などは許可が不要であるから、何でも引っかかるわけではないのだが、分譲地の造成などをすると許可が必要となり、同法32条の同意権を背景にした行政指導が行われて思いもかけないコストを被ることがある。
本件の開発業者は、周辺地域の排水路の設置を条件として(あくまでも行政指導だが)、分譲地の開発を許可され、分譲地は開発して販売してしまった。決算が9月だったのだが、9月には請負業者に頼んで排水路設置工事の見積りをもらい、これを牛久市にも提出したうえで、当該分譲地の販売原価として見積金額を損金の額に算入して申告した。
ところが、住民の反対運動にあい、牛久市は、2度にわたって設計を変更するなどした挙句、結局、排水路の設置工事を断念してしまう。開発業者も、結局は支払いをすることもなかった。
これが故意に虚偽の水増しを計上したとして、なんと刑事事件になってしまう。
1審、有罪。
2審、有罪。
債務確定主義は原価にも働くとする。
ところが、最高裁は、これらの判決を破棄、差し戻した。
理由は、次のようなものだ。
確かに債務確定していたとは言い難い。だが、①同意権を背景にした事実上の行政処分に近い強制力がある。②牛久市の方針変更に伴い、工事の内容は二度にわたって変遷しているが、金額自体は当初から変わっているわけではない。③9月に見積もりは出ており、年度末時点では見積もりは算定されていた。これらの事情からすれば、債務が確定していたとは言えなくても、「相当程度の確実性をもって」支出が見込まれ、その金額は決算時点で適正に見積もり可能であったのであるから、22条2項1号の売上原価として算入することも許される。
ざっと、こんなところだ。
文言を見る限り、債務の確定という点は、全く要求されていないのだ。そして、なぜ債務確定主義が必要なのかという点に遡って考えてみれば、それは、収益費用が個別対応する原価と異なり、販売費及び一般管理費の場合には期間対応で収益費用のマッチングをするしかないのであるから、恣意性や不明確性を排除するために、債務確定が要求されたと考えることができる。そうだとすれば、期間対応であるがゆえに、販管費であるがゆえに、債務確定主義が必要であるとされることになる。とどのつまりは、原価には債務確定が必要ないと考えることができるのである(租税判例百選第4版56、武井論文同旨)。
最高裁は、「相当程度の確実性」と「決算日に見積可能であったこと」の2点を条件としているが、これは引当金などの見積計上項目と通底する、税務のソリッドさを表現したものにすぎず、債務確定主義とは全く関係ないものである。
結論的には常識的なものであるといえるのではないだろうか。
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ものものしい名前の「タックス・シェルター」。
日本では、租税回避行為などと訳されていることが多い。
先日の日税連の公開研究討論会(平成19年度名古屋)で田中治教授が力説されていたように、
単純に「租税回避行為は違法か、合法か」と問われれば、
取り締まる規定がない以上、合法であると答えるのが筋であろう。
今日は、こんな「タックス・シェルター」の話をしてみよう。
所得が純資産の増加と仮定するなら、その増加原因は次の2種類に分類することができる。
一つは、資本の増殖による所得。預金利子や株式配当などが典型である。
いま一つは、勤労による所得。給与所得が典型例ではあるが、事業所得や不動産所得もこちらに分類することが可能である。
世界の流れは、北欧を中心とした二元的所得概念と、一世を風靡したサイモンズの包括的所得概念に二分されるであろう。
包括的所得概念の国では、典型的には総合課税という方法がとられ、高所得者は、その所得に引っ張られて、利子や配当までもが累進課税の高い税率を課されることになる。
これに対して、二元的所得概念を採用していると、勤労所得は累進課税だが、金融所得はこれと別に一定税率による比例課税がなされているから、高所得であっても利子や配当は一定税率であるにすぎない。
ドイツは、総合課税方式が厳格に採用されている。隣のルクセンブルクはいわゆるタックスヘイブンである。そうすると、ドイツの金持ちは何を考えるだろうか。火を見るよりあきらかだろう。
ベンツに乗ってアウトバーンをひた走り、ドイツで勤労により稼いだお金をせっせとルクセンブルクで銀行に預けるのだ。その結果、大量にドイツから通貨が流出し、金融資産による税収がぐっと少なくなることになる。
この現象は、同じく総合課税のアメリカでも頻発している。弁護士は、クライアントにケイマン諸島への投資を勧め、クライアントは喜んでこの投資を受け入れるわけだ。
仕組みはいろいろあるが、基本的にはこのような税率の格差を利用するスキームこそ、「タックス・シェルター」と呼ばれるものの中心をなしている。
日本では、外国税額控除の余裕枠を都市銀行が軒並み売却してお金に換えて訴訟となった。その結果として、アメリカのグレゴリー判決を真似た、business purpose doctrine(正当な事業目的の法理)と呼ばれる租税回避行為の一般的否認法理のようなものが判例として誕生し、世間を騒がせることとなった。つい昨年のことであったと記憶している。
さて、日本は、総合課税なのか?二元的所得概念なのか?
我が国は玉虫色がとっても好みで、総合課税の枠組みを維持しながらも、事実上は、租税特別措置法によって二元的所得概念のような形をとっている。
すなわち、利子も、譲渡所得も、分離課税であり、税率は一定の比例税率なのである。配当所得は二重課税排除のために、中途半端な課税方式のままだが。
私は、以前にも書いたが、二元的所得概念を支持するものである。そして、法人課税とは、金融所得課税の一環として、国税15%・地方税5%の比例税率を採用するべきであると考えている。法人税は、シャウプの昔から、もともと物税なのであって、これであって初めて、役員給与が損金不算入になることとの整合性が取れるではないか。
財務省の内部では、次第に二元的所得概念が強くなってきているように思われるが、理論的なこともともかく、国民的な議論がなされることがまず前提である。私のブログを読んで、税はかくあるべし、というご意見がどんどん出てくることを多少なりとも、期待している。
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