ものものしい名前の「タックス・シェルター」。
日本では、租税回避行為などと訳されていることが多い。
先日の日税連の公開研究討論会(平成19年度名古屋)で田中治教授が力説されていたように、
単純に「租税回避行為は違法か、合法か」と問われれば、
取り締まる規定がない以上、合法であると答えるのが筋であろう。
今日は、こんな「タックス・シェルター」の話をしてみよう。
所得が純資産の増加と仮定するなら、その増加原因は次の2種類に分類することができる。
一つは、資本の増殖による所得。預金利子や株式配当などが典型である。
いま一つは、勤労による所得。給与所得が典型例ではあるが、事業所得や不動産所得もこちらに分類することが可能である。
世界の流れは、北欧を中心とした二元的所得概念と、一世を風靡したサイモンズの包括的所得概念に二分されるであろう。
包括的所得概念の国では、典型的には総合課税という方法がとられ、高所得者は、その所得に引っ張られて、利子や配当までもが累進課税の高い税率を課されることになる。
これに対して、二元的所得概念を採用していると、勤労所得は累進課税だが、金融所得はこれと別に一定税率による比例課税がなされているから、高所得であっても利子や配当は一定税率であるにすぎない。
ドイツは、総合課税方式が厳格に採用されている。隣のルクセンブルクはいわゆるタックスヘイブンである。そうすると、ドイツの金持ちは何を考えるだろうか。火を見るよりあきらかだろう。
ベンツに乗ってアウトバーンをひた走り、ドイツで勤労により稼いだお金をせっせとルクセンブルクで銀行に預けるのだ。その結果、大量にドイツから通貨が流出し、金融資産による税収がぐっと少なくなることになる。
この現象は、同じく総合課税のアメリカでも頻発している。弁護士は、クライアントにケイマン諸島への投資を勧め、クライアントは喜んでこの投資を受け入れるわけだ。
仕組みはいろいろあるが、基本的にはこのような税率の格差を利用するスキームこそ、「タックス・シェルター」と呼ばれるものの中心をなしている。
日本では、外国税額控除の余裕枠を都市銀行が軒並み売却してお金に換えて訴訟となった。その結果として、アメリカのグレゴリー判決を真似た、business purpose doctrine(正当な事業目的の法理)と呼ばれる租税回避行為の一般的否認法理のようなものが判例として誕生し、世間を騒がせることとなった。つい昨年のことであったと記憶している。
さて、日本は、総合課税なのか?二元的所得概念なのか?
我が国は玉虫色がとっても好みで、総合課税の枠組みを維持しながらも、事実上は、租税特別措置法によって二元的所得概念のような形をとっている。
すなわち、利子も、譲渡所得も、分離課税であり、税率は一定の比例税率なのである。配当所得は二重課税排除のために、中途半端な課税方式のままだが。
私は、以前にも書いたが、二元的所得概念を支持するものである。そして、法人課税とは、金融所得課税の一環として、国税15%・地方税5%の比例税率を採用するべきであると考えている。法人税は、シャウプの昔から、もともと物税なのであって、これであって初めて、役員給与が損金不算入になることとの整合性が取れるではないか。
財務省の内部では、次第に二元的所得概念が強くなってきているように思われるが、理論的なこともともかく、国民的な議論がなされることがまず前提である。私のブログを読んで、税はかくあるべし、というご意見がどんどん出てくることを多少なりとも、期待している。