地方税が高くなった…そんな声がそこここで聞こえてくる。
税源移譲によって、国税と地方税のバランスが大きく変わったためである。
個人の場合には均等割の金額はそれほど大きいものではないが(1千円+3千円)、
法人の場合には最低で標準税率合計7万円である。
これが資本金1000万円を1円でも超えると、とたんに5万円+13万円で18万円が標準税率ということになる。
昨今は、建設業などで赤字の法人が多い。
法人税の税収が前年対比で伸びているのは事実だが、
実際にはパレートの法則よろしく、3割の企業が7割の所得を稼ぎ出しているような状態なのだ。
そこで、少しでも無駄な出費を避けるために、均等割の税額を下げることができないものかを考えたいところである。
しかし、資本金は、登記事項であるため、減資手続きを取ろうとすると登録免許税や司法書士の費用など、登記代がかかる。
そして、資本金の減少は、債権者に影響があるということで、減資公告を官報に載せたり、知れたる債権者の承諾を得たりするなど、ほぼ2カ月の期間を要する。文句があれば、即金で支払いをする必要もある。
さらに言うなら、実際に払い戻しをする実質減資の場合には、多大な出費を伴うことにもなりかねない。
さて、考え方を柔軟にしてみよう。
要は、均等割を下げたいのだ。
そこで、地方税法をめくり、均等割の課税標準を調べてみよう。
そうすると、「資本金」ではなく、「資本金等」の金額によって税額が決定されていることに気づくだろう。
市町村民税につき、地方税法312条、292条1項4号の5
道府県民税につき、地方税法52条、23条1項4号の5
この「等」とは、法人税法施行令の8条に詳しく記載されているが、要するに、登記上の資本金だけではなく、それ以外にも均等割の課税標準を決定するファクターが存在するということなのだ。
まず、気をつけなければならないのは、実際の払い戻しをしない形式減資の場合には、「資本金等」のプラス項目として、減資差益が入っていることだ(1項13号)。
たとえば、1500万円の資本金を払い戻しをせずに1000万円に減資してみても、 差額の500万円は減資差益であるから「等」に該当し、資本の1000万円と合わせて、結局1500万円のまま変化していない。この場合には、「資本金等」がやはり1500万円として均等割は高いままであることになる。
しかし、同8条1項には、マイナス項目もある。
1項20号に記載されているとおり、自己株の取得をした場合の取得資本金額は、直接「等」に組み込まれて、資本のマイナスファクターとして働く。
新会社法の制定により、自己株式は資本の払い戻しであると定義づけられたため、登記せずとも「資本金等」を変化させる簡便な方法が認められたのだ、ということができる。
利益が蓄積され、株価がもとよりも高くなっている会社はこの方法は難しい。
なぜなら、払いだしたお金はすべてが資本金の払い戻しであるということではなく、
一部はプロ・ラタ計算で、利益積立金の払い戻しとしてみなし配当の問題となるからである。
また、建設業については、純資産の部に直接的な変動を及ぼすため、経営審査との兼ね合いでよくシミュレーションを行ってから考えないと、ランク落ちということもありうる。
会社法の改正は税法にも大きな影響を及ぼしている。
勉強するといろいろ面白いものである。
サムライに営業権は存在するか?
平均年齢が非常に高い税理士業界においては、後継者のないまま税理士が死亡した場合、
いろいろなパターンで顧問先や従業員の引き継ぎが行われているようである。
また、各種業法において、法人化が各々認められており、個人から法人へと事業が承継されるケースも市場において散見されるところである。
今日は、これらを敷衍して、弁護士や司法書士等のサムライ業一般の問題として考察を加えてみよう。
たたき台としてまず掲げなければならないのは、個別通達である。
「税務および経理に関する業務」の譲渡に伴う所得の種類の判定(昭和42年7月27日直審(所)47
税理士が、その業務を廃止するに当たり、従来関与していた得意先を他の税理士等に引き継いだ場合において、その引継ぎを受けた税理士等から受ける金銭等に係る所得の種類の取扱方について、広島国税局長から上申があったが、これについては、雑所得として取り扱うよう指示したから了知されたい。
この個別通達を根拠として、弁護士が死亡した際に、パートナーが、死亡した弁護士の平均年間事業所得に事業用資産を加えた金額(金額にして年間顧問契約料金の2年分程度)を遺族に対して支払った事件において、国税不服審判所の裁決がなされた事件が篠原敦子税理士により投稿されている(年月日不明、出典JTRI税研133号(2007年5月))。結論は、この通達に引っ張られたか、備品等の譲渡対価は譲渡所得、それ以外の部分については持分清算の対価として、事業所得とされた。
ちなみに、請求人代理である税理士側の主張では、営業権の譲渡であるから、総合課税の譲渡所得であるとされており、この場合には長期譲渡所得として2分の1が課税対象となる。これに対して、課税庁側の主張は、備品等は譲渡所得で、その他は通達どおり雑所得とするというものである。
わかりやすいように表現すると、課税庁が収入金額をそのまま課税対象とする主張をしたのに対し、請求人は2分の1課税を主張し、裁決の結果は課税庁の勝利に終わったということである。
さてさて、営業権が士業に存在しないという主張の根拠は、次のようなものである。
①税理士(通達)も弁護士(裁決)も、個々人の経験や知識や技能を活用することによって営まれる一身専属的な業務である。
②顧問契約上の地位は、相手方との信頼関係に基づく一身専属的な地位である。
このような理由から、業務を他人に承継したとしても、それは得意先を斡旋したことの対価でしかない、として雑所得(事業所得)という判定がなされたわけだ。
ここで疑問が起こるのは、たとえばあさひ法律事務所が西村ときわ法律事務所に弁護士ごと営業譲渡された際に、どのような処理がなされるのだろうか?ということだ。あるいは、個人税理士が法人化したときに、社員や得意先をすべてひっくるめて法人に計上するときには、いったいどのような処理がなされるのか。
このような場合、分析的(ミクロ)考察をすれば、いったん社員が退職し、また就職したとか(社会保険労働保険の処理はそうなる)、得意先はいったん契約を破棄してまた契約したとか、売掛金は債権譲渡により移転したとか、事務所の賃貸借契約は契約者たる地位が移転したとか、そのようなこまごました処理を観念できないわけではない。
他方、総合的(マクロ)考察をすれば、社員や得意先などを含んだ営業という一体のものが一挙に移転したと考えることになる。
個人事務所が法人化した際には、複数の事業体の合併のような処理が不可欠であり、金銭の対価としては、事務所ごとに偏りが出てくるので当然である。単に純資産の比率で持分が決定されるとすると、いささかおかしなことにならざるを得ないのではないだろうか。しかも、同じ先生が引き続き仕事を継続されるわけであるから、一身専属性で問題が生ずることもない。この場合には、ミクロ的な考察よりも、明らかにマクロ的な考察のほうが現実的に合理性を有するものと思われる。
合従連衡が続く弁護士業界を横目にすれば、大手の事務所の場合には、一身専属というにはあまりある巨大なネームバリューとしての営業権を観念せざるをえまい。単なるミクロ処理では決してまかないきれない営業を否定することは困難であると思われるのだ。
そうすると、根本的に、営業権が士業に存在しないという考え方自体が再考を要するのではないか?
事例は、双方とも、たまたま後継者がいないため事業主が死亡してしまったために、税理士なり弁護士なりの営業自体が消滅してしまっているケースである、と考えることができるのではないか。
消滅してしまったものはもちろん売り物にはならない。
そこで、ミクロ的に個々の財産の移転であるとしか評価できなかったのである。
私の仮説からすると、生きているときに営業を譲渡することは可能ということになる。
税理士を廃業することにして、同業者に税理士事務所を譲渡すれば、それは営業の譲渡になりうるはずだ。信頼関係に基づく契約であるというのは、相手の承諾が必要であるということを意味するにとどまり、それだけで営業に財産的価値がないとか、譲渡が不可能であるということまで意味すると解する論理的必然性はないのである。
このように考えなければ、先ほどの法人化や、合従連衡を説明できないではないか。
士業だからといって、普通の営利企業と異なるわけではないと思う。
たまたま、業を営むには資格を要するという特殊性があるだけで、業務自体が何か特殊なものであると考えるのは考えすぎというものである。
大企業はもはや過去の遺物となった引当金制度。
退職引当金の取り崩しもあと3年くらいで終了する。
しかし、中小企業の場合には、租税特別措置法によって貸倒引当金の法定繰入率を使用することが引き続き認められている。
卸小売業…1%
製造業…0.8%
金融保険業…0.3%
割賦販売小売業…1.3%
その他…0.6%
こんな率を期末の売掛金残高に掛け合わせて、貸倒引当金を計算する。
今まで貸し倒れの実績がない人も、これによって少しだけリスク処理を認めてもらえることになる。
さて、二つ以上の業種を行っている場合、どれにあてはめることにすればよいか。
このような場合、条文を見ると答えが書いてある。
「法人の営む主たる事業がいずれに該当するかに応じ」割合を定めると記載されている(租税特別措置法施行令33条の9)。
ということは、複数ある場合でも、「主たる事業」が何かを考えて、それであてはめなさいというわけだ。
「主たる事業」とは何か。
条文にはこれ以上何も記載されていないので、その意義が問題となる。
そもそも、業種に応じてこのような率が決定されたのは、過去の統計などに鑑みて、経験的に業種と貸倒率の相関関係がみられることに由来するものである。複数ある場合にいちいち業種ごとに引当率を設定するのではたいへん面倒であることから、もっとも残高の多い業種の率を全体に援用してよいことにしたものであると考えられる。
とすれば、売掛金の内訳を調べ、業種で区分した場合の金額の比率を見て、最も大きい残高を有する業種こそが「主たる」事業であると考えるのが合理的である。
よって、業種別に区分した売掛金の残高の多少によって「主たる」かどうかを区別するのが正しい、と思われる。
簡単だが、法律の解釈の仕方を実践してみた。
このように、法の趣旨に遡って文言を解釈するのが「論理解釈」と呼ばれるものである。
文言をしっかりと材料にする「文言」解釈と並ぶ、重要な解釈方法である。
売ります・買いますが大流行の今日この頃、
事業を売却するときの目安を考えてみよう。
高校生のときの数学がとっても役に立つ瞬間。
たとえば、ガス屋さんがお客さんを一件、同業者に売却するとする。
そのお客さんが粗利ベースで毎年、Dの利益を稼ぎ出しており、かつ、
しばらくは他に移ることもないだろうと想定されるならば、
金額は、市場の金利を r として、次の計算式で算定される。
D ÷ r
たとえば、そのお客さんの貢献する粗利益が年間5万円、金利が10%とすると、
5万円÷10%=50万円
ということになる。
実に簡単な式だが、これは、無限等比級数の計算式を応用しただけである。
1年後の5万円は、現在10%で割り戻すと、5万円÷(1+0.1)=45,454円
2年後の5万円は、45,454円÷(1+0.1)=41,321円
3年後の5万円は、41,321円÷(1+0.1)=37,564円
4年後の5万円は、34,149円
5年後の5万円は、……
と無限に計算して、全部加えると、50万円になるのである。
証明をここに書くのは、記号がうまく使えないのでやめておくが、∑の計算ができる人はやってみよう。
もしも、10年はお客さんでいてもらえるだろう、と見込めるならば、10年の計算結果を合計すればよい。
数学は役に立たないという人がいるが、間違いだと思う。
建設業の方たちが、法面(のりめん)の計算にヘロンの公式を用い、三角関数を使い、川の流れの計算に物理の公式を使用しているのが好例だ。
また、コンサルティングには、データの分析上、エクセルのTREND関数を用いたりするが、あれは、モデルが線形であると仮定した場合の傾きの算定である。傾きは、曲線の方程式を微分することによって求めることもできる。また、ものの考え方として、貫く軸が特定できると、積分によってある事柄の体積を測定することができる。
会計の世界には、比較的、算数や数学が必要なことが多い。減価償却が典型であり、級数法(sum-of-the-years'-digits method)などを使うと、こりゃあ数学だなあ、と強く感じられる。
私はどちらかというと、幾何系が得意なのだが、これは算数で鍛えられたものだ。代数系は抽象理論を扱うことも多く、できが良くない人間にとってはちょっとつらい時もある。
数学は大切だ。
思考能力の涵養にあっても、実利面においても、数学の存在価値は測りきれない。