ある財団法人経由で、大型の事業承継を請け負うことになった。
いろいろ問題点をうかがう中で、様々な問題点が浮かび上がる。
当社は、当たり前のことながら、毎回オリジナルのソリューションを提供している。
今回当社が提案するのは、持ち株会と事業承継税制を併せたプラン。
事業承継税制は、面倒くさいことを除けばある程度効果が期待できるのであるが、
残念ながら、シェアの3分の2が限界だ。
そこで、残りの3分の1について有効活用するプランとして、従業員持ち株会を提案してみた。
よくあるような、偽物の持ち株会ではなく、本格的に社員のモチベーションのアップになるようなものを提案した。
副次的な効果として、相続税評価額がドラマチックに激減することになる。
社長は、ことのほかこの提案を喜ばれ、当社が全面的に企画と実行に関わることになったという次第である。
片づけなければならない問題は多い。
税理士は比較的、泥臭いナマズ議論を避けたがる傾向があるが、
本当に会社のことを考えるならば、ある程度、つらい場面を社長とともに乗り切ることもやむを得ない。
後継者問題とは、むしろ、金銭的なことよりも、親族間の確執をいかにスマートに解決できるかにかかっているといってもよいのだ。
私は、東京の会計事務所で相続の担当者だった時代から、数え切れないほどの相続問題をこなしてきた。理不尽に罵倒されたこともある。スケープゴートにされて苦しんだこともある。税理士をやめようと思ったことすらある。
それでも、一度たりと逃げたことはない。すべての事件を、すべて最後までやりとおし、最後にはきちんと納得していただいてきたのだ。
これが私には唯一の誇りであるといってもよい。
なぜ揉めるのかって?
私には説明のしようがない。しかし、問題がないようで、実際にはたくさんの問題が含まれているものだ。
相続というのは、数十年のコミュニケーション不足を一気に露呈させる手続きといっても、決して過言ではないだろう。
今でも思い出す、いくつかの事例は、最後に依頼人から感謝されたものばかりだ。
仲が悪かった兄弟の確執が解決された。知らなかった異母兄弟に初めて出会った。などなど。
生前の父親の愛情に今頃気づき、涙する娘。
相続はドラマだ。ヒューマニズムか。親心か。
人間の織りなす華麗な模様の中に翻弄され、魅力にとりつかれ、私は泥臭い相続業務が嫌いではないのである。
さてさて。
良くも悪くも、当社にとっては比較的大型の案件になる。
株価算定チーム。経済産業局担当チーム。持ち株会設計チーム。経営計画策定チーム。
4つのチームが走る。私は統括のプロジェクトマネージャーだ。現場監督。
明日からキックオフ。
クライアントや相続人たちの想いを一粒たりとこぼさぬように。
祈りを込めることとしよう。