端的に表現すれば、
生存する個人に関する情報で、特定個人を識別することが可能なもの
それが「個人情報」である。
例示として挙げられているものは、次のようなものである。
a.精神…思想、信条、政治的主張、宗教
b.身体…健康状態、身体的特徴、病歴、遺伝子
c.身分(生活・家庭)…氏名、住所、本籍、家族関係
d.社会的地位…学歴、犯罪歴、職業、資格、肩書き、所属団体
e.財産…財産額、所得、納税額、金融取引、不動産取引
しかし、ここに掲げられているものでは不十分であろう。例えば、商品の購入履歴、ある日の行動履歴なども個人情報であるし、銀行やエレベータの監視カメラに写った映像も個人情報である。識別可能性というメルクマールを定義に取り入れた「個人情報」の概念は、たいへん広いものなのである。
ひとたび個人情報に該当すると、取得、保有、利用、伝播のそれぞれについて、本人のコントロールの下におかれなければならない。みだりに他人が取り扱いをすることはできず、取り扱いの一部が許容される場合においても、厳格な制約の下におかれることとなる。
なぜ、ここまで厳格になったのか、疑問に思われる方もおられるかもしれない。だが、コンピュータの性能が格段に向上し、またネットワーク化が進んだ今、本気になれば、ある人の行動パターンは筒抜けになってしまう可能性があるのだ、ということを認識しておかなければならないだろう。
携帯をもたない人はほとんどいない。GPS機能までついていなくても、どのアクセスポイントから電話がかかっているかによって、その人が今どこにいるかはほぼ逆探知できる。
コンビニで買い物をするとき、携帯やカードで決済をすると、誰がどこで何を買ったかが履歴として残る。
銀行やコンビニやエレベータ、駅の構内などの監視カメラの映像を見ると、誰がどこにいるかがわかる。以前問題となったように、警察が公道に防犯のため24時間カメラを回していたことがあった。衛星写真などは、いつシャッターを押されていても、誰も気づきはしない。
いちど交通違反でつかまった人は、警察に指紋を採取されている。喫茶店で、デパートで、あなたが触ったものはすべて指紋がついている。
銀行の引出履歴・カードの使用状況・携帯の通話記録・監視カメラ・メールの内容エトセトラエトセトラ…。
私たちの情報は、すべてがネットワークの中に散在しており、集約しようと思うと恐ろしいことになる。警察が国家権力で何かを調べようとしたら、できないことなどなくなってしまうのではないだろうか。
私は悪いことなどしていない。
みなそういうのである。悪いことをしていなくても、疑いをかけることなど簡単だ。みなマスコミのことを疑いもしない。週間税務通信が変なことを書いていても、ちまたの税理士たちは、疑問に思わず、国がそんなふうに考えているのだろうと国のせいにしてしまう。書いてあることをそのまま鵜呑みにして、疑いもしていないではないか。
悪いことをしていなくても、逆恨みされたりストーキングされることがある。ストーカーもエスカレートしていて、通販で買った怪しげな盗聴器やら、盗撮カメラやら、ショック警棒やら、恐ろしいものを持っているのだ。
自分の中に、確たる判断の基準を持て、と、私は高岡高校の講師をしたときに生徒たちに訴えた。人と比べるだけの人間になるな。正しいことと誤っていることを、人に頼らず、自分の力で判断せよ、といいたかったのだ。
だが、こういうことを人々に訴えていくのは時間がかかることだ。
とりあえず、個人情報を保護することが大切だということを私はここで強く言いたいのである。個人情報保護法は、決して行き過ぎではない。世間の人々はちょっと過敏すぎるかもしれないが。
平成18年の相続税の税制改正の内容を見ていて、「あれ?」と思ったことがある。
物納の審査期間について、今まで苦情が寄せられることがあったが、とうとう「標準処理期間」が定められていたのだ。
これは、言わずと知れた「行政手続法」の影響である。
日本は官僚国家であり、行政が強大な権力を持っていることは周知の事実である。その行政に対して、横暴であってはならないことを規定したのがこの「行政手続法」だ。平成6年から施行されている。
私は当初この法律をみたとき、本気で取り組むのだろうか?といぶかしんだものだ。いまだかつて、行政が自分で自分をしばる法律など作ったことがあったのであろうか。
懐かしいあの日本新党の細川内閣であればこその快挙でなかっただろうか、と今にして思うのである。
おっと、横道にそれてしまった。
何はともあれ、行政手続法は毎年改正がなされ、次第に充実してきている。今日は、「申請に対する処分」の話をしよう。
会社を経営すると、様々な行政の手続に出くわすであろう。これがわからないから、素人の方は我々税理士のところにやってこられるわけだ。
わかりやすいところで、税務署への各種届出、運転免許証、古物営業、飲食店の食品衛生法の許可、道路運送の緑ナンバーなどなど。身の回りで行政とかかわりあいなく仕事ができることなどほとんどない。うちの弟は私立探偵をしているが、今国会で、今までフリーであった探偵の世界にまで「探偵業法」という法律が成立している。
そして、この手続というのがたいへんだ。昔は行政から許認可をもらうことは至難の業であった。何せ、基準が公開されていないので、どうしたら許可されるかわからない。申請を拒否されても理由を教えてもらえない。明確に拒否されるのはまだよい方(?)で、申請を提出してから、待てど暮らせど返事が返ってこない。下手に気を悪くされると、書類を突きかえされることすらある。いわゆる「受理」しない、というケースがこれだ。
さて、行政手続法は、こんな経営者たちへの救世主だ。
5条(審査基準)には、行政庁が審査基準をあらかじめ定めて(可能な限り具体的に)、公にしておくことが規定されている。
6条(標準処理期間)には、申請があってから、何らかの応答をするまでの標準処理期間をあらかじめ定めて公にすることが規定されている。
7条(申請に対する審査、応答)には、申請には、「受理」が不要であり、物理的な到達で審査開始しなければならず、速やかに応答することが規定されている。
8条(理由の提示)には、申請拒否については、理由を述べなければならないことが規定されている。
後は省略するが、この4条はすばらしいことだと思いませんか?
皆さん、知ってましたか?
「受理」という概念はすでに消え去りました。
郵便で送っておいて、書留にしておけば、日付の証拠が残ります。
標準処理期間(まだない場合があるが)が経過したら、違法です!とはっきり言える。
もしも拒否されたら、文書で拒否理由をもらいましょう。公表されている審査基準と照らし合わせることによって、何がまずかったのかがしっかりとわかります。
ただ、…というといやな気がするかもしれませんが、そうなのです。
適用除外というやつがまだまだたくさん残っています。3条、特に3項がくせものです。条例が根拠規定になっているものについては、適用されません。また、県や市の行政指導の形を取られると、まったく適用されません。
他にも、残念なものは外国人関係です。
10号 外国人のビザや永住権等 → 相変わらず理由を教えてくれません。
ううむ。やっぱり、中途半端……ですよね。
行政手続法拡大をぜひ議員さんたちにお願いしたいものです。