今日は私の誕生日だったが、訪問したお客様のところで、思わぬ勉強をさせていただいた。
会長が、現社長に対して、社長とは何か、どうすれば優秀な経営者になれるのかをこんこんと説いていらっしゃるのをそばでお聴きすることができたのである。
建設業の会社で、今のような時期にきちんとした利益を計上しておられる会社は極めて少ない。
底知れぬ価格破壊と、公共工事バッシング、独占禁止法の強化。
建設業をとりまく環境の悪化は、とどまることを知らない。
会長のお話の要点は、結局は、正確な原価管理と峻厳なるリーダーシップに尽きる。
まとめると、次のような話になる。
会社に起こる事象は、すべてがお金に絡む。
あるいはコストであり、あるいは収入である。社長は、最終的にはすべての責任を自分がとらなければならないのであるから、目を皿のようにし、耳をそばだて、神経を集中させてあらゆる情報を収集しなければならない。どんなことも結局はお金に絡んでくるのであるから、的確にその効果を経済的に計算して、頭の中に描けなければならないのだ。
社員に対して優しいだけの社長では、必ず会社を潰すことになる。なぜなら、社員と社長の利害は、最初から相反しているからだ。社長は、自分が最後に責任を取るという気迫があるがゆえに、社員に厳しくなって当たり前なのである。赤字の場合には、自分が自腹を切らなければならないからこそ、現場のコスト管理、進捗状況管理においては徹底的になるのが当然なのだ――。
建設業プロパーの話と思うなかれ。
これは、建設業が受注金額の中で仕事をこなして黒字を出す業種であるという特殊性に関連したものであることはもちろんだけれど、あらゆる業種について、同様の感覚は必要不可欠なのである。
●自社の損益分岐がいくらなのかを知らなくて、入札に参加できるか。
●現場の人件費や、機械の損料を頭に入れていなくて、采配ができるか。
一つ一つの現場が積みあがって、会社の利益が算定されるのであるから、一つ一つの現場で利益を出していくしか、会社の利益を上げる方法はないのである。
会長のおっしゃることが会社経営の王道であり、これこそがお金を払っても聞く価値のある帝王学であること、自分自身の経験に裏付けられた貴重な言葉であることを私はよく知っているのである。
いくら計算が上手で、会社をきりもりするのが上手でも、それだけでは足りない。仕事がなければ意味がないのである。そこで、会長のもう一つの技が光る。
これは、大まかに言うと、「問題解決能力」である。
公共工事であれ、根本には何かしらのニーズやウオンツがある。
このニーズやウオンツを正確に掘り起こし、形に変え、仕事に落とし込み、業者を取りまとめて完成させる。このような総合力を快適に発揮する力を、この会社はもっている。
立ちはだかるさまざまな困難を解決し、必ずやり遂げる実行力。
これを信頼されると、おのづから仕事が流れてくるようになる。
現場の仕事ができるだけなら競争入札で値段をたたかれる。しかし、この会社にしかできない仕事なら、この会社がやるしかない。これこそが、生き残る会社の最強のツールなのである。
いくら営業に行って名刺を配っても、それでは仕事を頼む理由にはならない。酒を飲んで親しくなってみたところで、お願いして仕事を回してもらう程度かもしれない。
オンリー・ワンになれ。
口で言うほど簡単ではないが、この競争力(コア・コンピタンス)が、会社の高い利益率の秘密なのである。
私は、その会社の創業しばらくしてから、現在に至るまで、ずっと税理士をさせていただいている。
最初の頃は、怒鳴られ、なじられ、居場所もないほどお叱りを受け、精神的に苦しい仕事であったが、相棒の担当者とともに、お客様のニーズに完璧に応えることに全力で取り組んできた。お客様も、至らぬ私に、よくもまあ、エネルギーをかけてお付き合いいただいたものである。相棒の担当者も、泣きながら、よくついてきてくれたものだ。担当者は何人も交替しており、今の彼女が仕事を完全に成し遂げることができた唯一の担当者である。荒くれ者を束ねて仕事をする建設業の社長は、怒鳴り声をあげつづけるようなエネルギーがなければ到底務まらない。お互いに、濃密な時間をすごしてきたことを実感するのである。
私も、駆け出しの頃、当時社長だった会長に対抗するため、建設業に関する通信教育の教材をいくつか買って、原価管理や建設業の仕組を勉強し、必死になって会長についてきた。今やっと少し、会長から信頼されるようになったように思える。まあ、みんなで頑張ってきたのかな、という感じがして、我が社の誇り高い伝説の一つになっているわけだ。
社長は会長になり、新しい社長が帝王学を学んでいる。
今日叱られたとしても、新社長が新しい自分の伝説を創ればよい。
私ももう一度、新しい会社に誠心誠意尽くさせていただこう。
成長するには、自分の古い皮を脱ぎ捨てる、脱皮の苦行がつきものだ。
血を流して、もっと大きな自分になる。
私も42歳。勇気を出して、もう一度脱皮に取り組もう。
年寄り臭いことをいうのはやめ。
お客様に教えられ、励まされた誕生日であった。
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