少し古くなってしまったが、
トム・クルーズが主演をつとめたThe Firm邦題「法律事務所」(ジョン・グリシャム原作)は、法律事務所といいながら、内容的にはザ・会計事務所とでもいうべき内容であった。
税理士になって間もないころだった私は、 この映画を見ていろいろなことに驚愕したのを今でもはっきりと覚えている。
アメリカでは税理士業務は弁護士に属していることはよく知られていることだが、
トム・クルーズ演じる主人公は、ハーバード大学を出て、理想に燃えて租税法専門の弁護士(日本でいう税理士)になる。
現実の業務は、理想と異なり、ビジネスの厳しさを知るが、あろうことか、自分の勤務先が国際租税回避を超えて、脱税業務に足を踏み入れていることを知ってしまうことになる。
映画らしいドラマチックな展開がここから展開していくが、まだ観ておられない人のために、詳細は省略することとしよう。
さて、トム・クルーズならずとも、理想と現実のギャップにいろいろ悩んだ税理士は多いのではないだろうか。かくいう私も日々の業務の中で、試験勉強で学んだことと実務の違いを何度も悩みながらここまで齢を重ねてきた。
世代の違いはあれ、それぞれの世代にそれぞれの課題がある。
日本の税理士制度は、世界でも珍しい制度であり、比較法的には極めて興味深い点が多々ある。
これらは、諸先輩方が、当局と議論を繰り返しながら、よりよい制度を目指して一生懸命に研鑽されてきたことの何よりの証であろう。
私は税理士であることを誇りに思い、現在の税理士制度を、また税理士の仲間たちを心より大切に思っている。
はたと考えるのは、いつの日か、40代の世代が税理士会を支えていく時代が来たとき、
その時には、私たちはいったいどのような地平線を目指すのかということだ。
法律事務所という映画を含め、刊行された書籍類等からインスピレーションされる点をいくつか例示してみよう。
① 業務の国際化
TPPが騒がれて久しいが、国内企業が国外にも拠点を設けることがすでに当たり前の時代が到来している(チャイナプラスワン)。我々は、クライアントの信頼に応え、海外部門の財務コントロールも手掛けるようにならなければならない。
② 会計業務の比重が重くなる
国際化につれて、国際会計基準や米国会計基準などの国外の会計制度にも明るくならなければならない。発生主義の捉え方、為替の換算方法や、在庫の計算方法、減価償却など、各国の異なる制度を業務に標準的に取り入れていくことが必要である。
③ 税務の専門性の深化
我が国の法人税も所得税も相続税も、国際性がどんどん強まっている。これまでの業務に比べて、格段に移転価格税制や源泉徴収制度、PE制度などの国際租税分野に専門性が必要とされることが考えられる。組織再編や企業買収などの事案も増えてくることが予想される。
④ 周辺領域業務拡大とコミュニケーション能力
経営が多角化するために、企業が抱えるリスクは幅が広くならざるを得ない。税理士は社長の参謀として、様々な分野の雑学をコンサルティング能力、リスクマネジメント能力に高めていくことが要求される。同時に、事務中心の業務から、他人を説得し、説明するマネジメント能力が必要とされる。
⑤ ITに関する造詣の深さ
ITに投資しない企業は売上が落ちるという統計がGoogleから公表されているが、コストを削減するために、経営の効率性を向上するために、あるいは売上を向上するために、ITの必要性を無視することは到底できない。スマホを含め、ITに対する配慮が不可欠であると思われる。
⑥ 専門家のネットワーク
税理士法人が次第に増えているのは、上記のような社会的ニーズを一人の税理士で賄うことが難しいことも一つの理由ではないかと思われる。しかし、それにとどまらず、資格の枠を超えて、弁護士や司法書士・社会保険労務士、他国の資格保持者などと連携して次第にプロジェクトチームが巨大になっていくことが考えられる。
いやはや、書いている本人も気が遠くなる思いがするが、税理士が21世紀も重要な資格であり続けるためには、世界の全体ビジョンを視野において、方向性を探っていくしかない。税理士の未来について、少しずつ議論をしなければならないときが近づいているように思えてならない。
≪ 続きを隠す
オバマ大統領のスリーエス施策がアメリカにおいてどこまでの成果を上げ続けるか、
私には予測もできないことだが、
実は中小企業の戦略策定においても、これらの施策は極めて有効である。
スリーエスとは、
❶ Speedy ❷ Substantial ❸ Several years であり、
要するに、「すばやく抜本的な改革を数年でやり遂げる」 というようなことだと理解している。
スピードだとか、スケール(規模の大きな;サブスタンシャルの意訳)だとか、
古臭い❶❷に並んで、
❸の数年でやり遂げる決意まで含んでいるところがオバマの若い行動力を如実に表しているだろう。
ちょっとわかりにくいが、意を汲んで、BCDでも表現することができる。
B Balancedー全体的な配慮を忘れず、
C Competitiveー競争力のある
D Decisiveー決断に満ちた
改革を成し遂げる
持論の繰り返しになるが、 ヒトもカネもモノも、いわゆる経営資源(マネジメントリソース)に限りのある中小企業にとって、
勝機とは、いわゆるヒットアンドアウェイ戦法を基本とすべきである。
特に、リスケなどしている企業においては、 自らを敗軍の将であると率直に受け止め、 知恵を絞り、一点集中で必殺の一撃だけを何度も繰り返すのだ。
火力の弱い戦闘機が、戦艦を圧倒し、戦いに勝利を収めるとすれば、 寄せては返す波のように、攻撃をたたみかけるしかない。 正面からの真っ向勝負など自殺行為である。
少ない燃料と弾薬を最大限に有効活用する。 格好をつけず、強いところで徹底的に勝負する。
そして、ダメとわかったら、一目散に撤退する。
命があればまた戦うことができるが、死んでしまったら元も子もない。
私は暴力は嫌いだが、しょせんビジネスは戦場である。 孫子の兵法が流行する昨今の世に、このような例えも宥恕されたい。
バランスと斬れ味と決断実行力。 これがBCDである。
もう一つ、A を付け加えるとすれば、affirmativeで前向き、ってのはどうだろう?ちと中身が薄いが、名付けてABCD戦略。
E も付け加えて、Execute でやり遂げる、てのもいいか。
F はFullyで徹底的に、とやり遂げるを修飾するのもよい。
G でグローバルな視点を。
H は……~_~; 思いつかなくなったので、打ち切り。
バランスはバランススコアカードに倣い、 株主・社員・業務プロセス・顧客満足の四つの視点を。 木を見て森を見ずにならないように、SWOT分析を共有することを忘れまい。
自らも経営者として、常に心に刻んでおこう。
いつも通り、元旦に事業計画を立てた。 事務所を開設してから一度たりと怠ったことはない。 今年は私の個人事業所が第17期を数える。
初心にかえって、頑張ろう。
≪ 続きを隠す