申告是認の通知
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秋は税務調査のハイシーズンだ。
3件の税務調査が、ポンポン入ってきたが、 特に問題もなく、すでに終結を迎えつつある。
金木犀かおる秋――
柄にもなく、ウットリすることがある。公園脇やいろんなおうちのそばで、華やいだ黄色い小さな花を見かけると思わず吸い寄せられてしまう。不審者に思われないか、心配なところではあるが。
鉄砲玉の崎山も、すでに齢51だ。
花のにおいなど、気にすることもなく今までよくぞ突っ走ってきたものだが、上の娘も大学に進学し、普通の親のような顔をしていると、おそらく不審者だとは思われないだろう。
さて、余談はともかく。
税務調査と言えば、すごいものも経験しているところだが、最近の税務調査はあまり大きなことがない。時代なんだと思うが、税務調査官がずいぶん若返り、ちゃんと調べられるのかしら??と思うような調査もある。
かと言って、あとからたいへんなことになったケースもあるのだが、税務調査も昔のように人権を踏みにじるような形態のものは少なくなったということは確実だ。逆に、若い調査官だと、真実に迫る調査ができないのではないかと心配するくらいのレベルになっている。
私は、昔からお客様をよりよい道に導いていくことこそを誇りとしているので、正々堂々と税務署にわたりあう自信はあるのだが、もしかすると、いい加減な申告が見逃されることもありうるのではないかと思うと日本の将来を憂う気持ちが湧いてきてしまう。
さて、今日は相続税の調査だったが、 ベテランの調査官二人で、安心してよい話し合いができた。
先日は、富山税務署の統括官が臨場され、これは、申告是認ということで全く問題がなかった。
申告是認というのは、いわば100点満点みたいな意味で、税務署から更正の理由なしという通知をいただくことができる。経理に携わる人間にとっては、自分の仕事にお墨付きをもらったようなことで、やはりうれしいものだ。私だって、指導内容にミスがなかったと第三者に言ってもらえるのはやはりうれしいことなのだ。
残る問題は、国税局が事前通知なしに8人もいきなり臨場した事件のみ。明日、指摘事項を聞かせていただくことになっているが、どんな内容になるかはまだはっきりとしていない。
戦いの中にこそ生き甲斐が感じられたりすることもあるのだが、力を持て余しつつ、エネルギーを別のお客様へのご提案にぶっつけていこう。私のブリーフケースには、中里先生編集の税務判例六法第2版が格納されているのだが、この伝家の宝刀を最近は抜く機会がないのだ。
激論を戦わせる税務調査は、今後見込めるのであろうか?すでに、飛び道具(手続論)の方が蔓延して、刀で戦うサムライは放逐されていくのであろうか?
何だか、変な書き込みになってしまったが、要は、税務の世界の好敵手が少なくなってきているのではないかと 妙な心配をしている次第である。
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クライアントと話すしあわせを噛みしめる
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田舎の氷見市から始まった小さな会計事務所---
それが当社のルーツである。
私が4歳の時に商社を商社を退職して作ったという。
今日は、父母と私の家族が全員で食事をする日。
二十年間続けてきた小さな伝統だ。
父は焼酎を飲みながら、久しぶりに昔話をしてくれた。
高3の娘は、こういうときはとってもいい子で、うんうんと頷きながら話を聞いてくれる。
パパには冷たいのだが、本当は不器用で優しい子なのだと私は知っている。
うちは今でも小さな事務所だが、必死になって海外進出などを支援しようとしている。
日本に帰ってきた私には、休む時間などない。土曜日も日曜日でさえもお客さんとの予定があり、頭を絞ってアイディアを出したり、叱られたり、愚痴られたり、逆に考えさせたり、愚痴って慰められたり。
忙しいけれど、私は本当は幸せだと思う。
専門家であるにせよ、こんな愚かな人間を、お客さんたちはこの上もなく信じてくれる。胸襟を開いて腹を割って話をしてくれる。
どんなにか私の心から闇が消えていくか、きっと、誰一人わかる人はいるまい。
社員たちと話しているときも幸せだが、お客さんたちは、すべて対等な関係である。将軍と軍師の関係とでも言うのだろうか。何か、妙な緊張感と、妙な安心感と、そして時折ホッとするようななごみがある。
話題が資金繰りのこともある。私が社長を叱責したりすることもある。それでも、お互いへの信頼感が前提だから、心地がいいわけだ。
最近、いいお客さんが増えるようになった。来るところ来るところ、なかなか見どころのある会社ばかりである。社長に信頼を委ねられたと感じた瞬間、私の命はまた一つなくなるのだ。
税理士とは、そのような因果な商売である。いったい何回命を賭けなければならないのだろうか。
心配に思われるかもしれないが、用心棒たるもの、そう簡単には死んだりしない。何度命を賭けても、武蔵のように生き延びる。
自分は特にしぶとい方ではないかと勘ぐっているが、どこかで案外コロンと殺されたり病気になったりするのかな。自分がいなくなったら、ときどき困る人もいると思う。しっかり健康管理をしよう。
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淡々と…
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試算表を毎月出せるところが少なくなったと、
銀行員が言う。
不景気が続くと、税理士は人気がないらしい。
月次の業務を年次の業務の変更されるお客様が多いとのこと。
うちも例外ではなく、業務量を減らされることはある。
問題は、税理士本人の中にも、税理士の顧問料って何ですか?という話があることだ。
社員が言うならまだしも、税理士がそんなことをいうのは、まことに恥ずかしい限りである。
顧問料をもらったら、顧問なのだから、会社の一員としてお客様のことを一生懸命に考えるのに決まっている。
顧問料の意味が分からない税理士さんは、お客様のことを一生懸命に考えているか?
自分の仕事は単純に帳簿を作るだけだと思っていないか?
何とか率だとか、ろくに説明もできないような資料を馬に食わせるほど印刷していないか?
崎山税理士事務所はちがいます。
顧問とは、会社に未来の光を当て、弱点を探し、勇気づけ、鍛え、お客様を第三者の目で指導する仕事なのです。
嫌われても、うるさがられても、はては、くびになったとしても、それでもお客様の真の利益を考えて文句を言うこと。
これが、顧問なのです。
馬鹿にされてもかまいません。
私はそれでうちの事務所を2代目として17年間続けています。
わからなければ、それでいい。わかる人にだけわかればいい。
件数を増やすことは苦痛だし、今あるお客様を大切にしたいと思っているからです。
お客様を大切に思っています。
がんになったお客様の家族愛に応えて、相続スキームを作ります。
社員思いの社長のために、持株会プランを作ります。
お父さん思いの後継者のために、売上アップ作戦を企画します。
夢をかなえるために、一緒に汗をかきます。
これが、税理士の顧問なのです。
気迫と確かな知識と、情熱で、お客様を支え、社長の気づかない目線を提供すること。
特定の分野に偏らない、バランスの取れたリスクマネジメント
SWOTやバランススコアカードに基づいた、思い付きでは決して語れない戦略
日々努力を続けることによってのみ生まれてくる、先端技術への確かな知識
法律で厳しく管理された守秘義務や忠実義務、業務の文書化
あなたの経営パートナーを安い顧問料で雇えるなんて、なんと素晴らしいことだと思いませんか。
これがわかってくれる方だけが、私たちのクライアントになりうるのです。
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21世紀の税理士事務所(「海流」原稿平成25年3月号に向けて)
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少し古くなってしまったが、
トム・クルーズが主演をつとめたThe Firm邦題「法律事務所」(ジョン・グリシャム原作)は、法律事務所といいながら、内容的にはザ・会計事務所とでもいうべき内容であった。
税理士になって間もないころだった私は、 この映画を見ていろいろなことに驚愕したのを今でもはっきりと覚えている。
アメリカでは税理士業務は弁護士に属していることはよく知られていることだが、
トム・クルーズ演じる主人公は、ハーバード大学を出て、理想に燃えて租税法専門の弁護士(日本でいう税理士)になる。
現実の業務は、理想と異なり、ビジネスの厳しさを知るが、あろうことか、自分の勤務先が国際租税回避を超えて、脱税業務に足を踏み入れていることを知ってしまうことになる。
映画らしいドラマチックな展開がここから展開していくが、まだ観ておられない人のために、詳細は省略することとしよう。
さて、トム・クルーズならずとも、理想と現実のギャップにいろいろ悩んだ税理士は多いのではないだろうか。かくいう私も日々の業務の中で、試験勉強で学んだことと実務の違いを何度も悩みながらここまで齢を重ねてきた。
世代の違いはあれ、それぞれの世代にそれぞれの課題がある。
日本の税理士制度は、世界でも珍しい制度であり、比較法的には極めて興味深い点が多々ある。
これらは、諸先輩方が、当局と議論を繰り返しながら、よりよい制度を目指して一生懸命に研鑽されてきたことの何よりの証であろう。
私は税理士であることを誇りに思い、現在の税理士制度を、また税理士の仲間たちを心より大切に思っている。
はたと考えるのは、いつの日か、40代の世代が税理士会を支えていく時代が来たとき、
その時には、私たちはいったいどのような地平線を目指すのかということだ。
法律事務所という映画を含め、刊行された書籍類等からインスピレーションされる点をいくつか例示してみよう。
① 業務の国際化
TPPが騒がれて久しいが、国内企業が国外にも拠点を設けることがすでに当たり前の時代が到来している(チャイナプラスワン)。我々は、クライアントの信頼に応え、海外部門の財務コントロールも手掛けるようにならなければならない。
② 会計業務の比重が重くなる
国際化につれて、国際会計基準や米国会計基準などの国外の会計制度にも明るくならなければならない。発生主義の捉え方、為替の換算方法や、在庫の計算方法、減価償却など、各国の異なる制度を業務に標準的に取り入れていくことが必要である。
③ 税務の専門性の深化
我が国の法人税も所得税も相続税も、国際性がどんどん強まっている。これまでの業務に比べて、格段に移転価格税制や源泉徴収制度、PE制度などの国際租税分野に専門性が必要とされることが考えられる。組織再編や企業買収などの事案も増えてくることが予想される。
④ 周辺領域業務拡大とコミュニケーション能力
経営が多角化するために、企業が抱えるリスクは幅が広くならざるを得ない。税理士は社長の参謀として、様々な分野の雑学をコンサルティング能力、リスクマネジメント能力に高めていくことが要求される。同時に、事務中心の業務から、他人を説得し、説明するマネジメント能力が必要とされる。
⑤ ITに関する造詣の深さ
ITに投資しない企業は売上が落ちるという統計がGoogleから公表されているが、コストを削減するために、経営の効率性を向上するために、あるいは売上を向上するために、ITの必要性を無視することは到底できない。スマホを含め、ITに対する配慮が不可欠であると思われる。
⑥ 専門家のネットワーク
税理士法人が次第に増えているのは、上記のような社会的ニーズを一人の税理士で賄うことが難しいことも一つの理由ではないかと思われる。しかし、それにとどまらず、資格の枠を超えて、弁護士や司法書士・社会保険労務士、他国の資格保持者などと連携して次第にプロジェクトチームが巨大になっていくことが考えられる。
いやはや、書いている本人も気が遠くなる思いがするが、税理士が21世紀も重要な資格であり続けるためには、世界の全体ビジョンを視野において、方向性を探っていくしかない。税理士の未来について、少しずつ議論をしなければならないときが近づいているように思えてならない。
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税理士ってどんな仕事?
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お客様に誘われて、久しぶりに桜木町でお酒をいただいた。
居酒屋で、すっかり意気投合し、2件目はいわゆるキャバクラに。
硬い私だが、女の子に合わせて、ペット談議や外国―おもに中国や韓国の話。
「連れてって!」「おーし、いいとも!」
なんちゃって、もちろんしこたま酔った発言は、約束としての効力をもたない。
「カフェー丸玉女給事件」などという大審院時代の判例(大判昭10.4.25)が、贈与の真意を問う破棄差戻し判決をしたのは有名な話である。
それはともかく、お客様と、楽しい時間を過ごすこともまた大切な仕事の一つである。
しかし、残念なのは、税理士という仕事がどんな仕事か、世の中ではほとんど知られていないことだ。
「税金の計算する人でしょう!?」
「会社の帳簿付けてる人?」
このような感覚の人は、まあ、現実をよくとらまえている。
しかし、税務署職員と税理士がどう違うのか?
経理や総務の仕事と税理士の仕事はどう違うのか?
この辺を突っ込んでいくと、「税理士じゃないからわかんない!」
と怒られるのが落ちだ。
挙句の果てに、「税務署の人でしょう?」とか、「脱税を教えるんでしょう?」
なんて言われると、腹が立つのを通り越して、がっくりと肩を落とす羽目になる。
だから、あまり自分の仕事を飲み屋でしゃべったりすることはない。
考えてみれば、税理士にもいろんな人がいる。
自分の仕事を英語にするのを見ていると、その人が何を仕事にしているのか垣間見える。
一番よく見かけるのは、
Certified Tax Accountant
これは、公認税金計算士とでも訳すのだろうか。
公認会計士のCPAに引きずられた翻訳のようで、私はあまり好きになれない。
あなたは、税金の計算をする仕事なのか?と、逆に問いかけたくなる。
私が好んで用いるのは、税務代理士という
Tax Attorney
もしくは、税務相談を受ける人として、
Tax Consultant
くらいのものか。
これでも、税理士が本当に行っている仕事の半分に満たない。
税理士の業務の過半は、税務以外の会計や企業経営にかかわる様々な実務問題だ。
中小企業は、資金が潤沢にあるわけではないので、税理士の雑学は貴重な情報源だ。
安い顧問料を払っているだけで、数百数千数万の体験を自らに教えてくれる、
いつもそばにいて、電話一本で気軽に、お金のことを心配せずに、安心して聞ける。
秘密は漏れることはない。仮に国家を敵にまわそうと、税理士は自分の味方に付いてくれる。
会社を経験しないと、こんなことは理解不能だろう。
サラリーマンは、あるいは公務員も、
自分の仕事と、自分のプライベートだけを考えていればよい。
しかし、企業を運営するのはたいへんなことだ。
行政に規制され、同業者とシェアを争い、銀行に返済能力を疑われ、税務署からは脱税を疑われる。
下手をすると社員は敵に回り、外であることないことを吹聴し、不満があれば労働基準監督署に駆け込む。
家族は、稼ぎが少ないと愚痴るし、一生懸命働くと家庭を顧みないと怒られる。
得意先からは値段をたたかれ、仕入先からは増額を要求される。
ときどき、飲み屋で気持ちを発散したくなるのも無理はない。
税理士は―――
税理士自身も実はいろいろ辛かったりするのであるが(^^;、
税理士の仕事こそ、つらい社長の重荷を一部、背負ってあげることなのである。
わからない?
あそうだろうね。わからないだろうなあ。
でも、きっと社会に出たら、わかってもらえると思うんだけどなあ。
サラリーマンも、つらいと思う。上司と顧客の板挟み。
そして、村社会の中で、自分には解決する方法はない。
それもたいへんだろうとは思う。
でも、社長がたいへんなのは、すべてが自分の責任だということだ。
これは、サラリーマンや公務員にはないことだろう。
口では、責任が何とか言うかもしれないが、本当に責任があるのは、中小企業では常に社長なのである。
個人事業では文字通りだし、法人でも大企業のように自分は関係ない、などと言わせてはもらえないから。
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保証協会の会計割引制度変更をめぐる動きについて
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東日本大震災の影響でストップされていた表記制度の変更が、当年4月1日からはすでに実行されている。
税理士会として、何度も告知してきたことであったが、やはり水面下でいろいろな事件が起きているようだ。
私は、北陸税理士会のこの分野における実務責任者であり、多方面からの動きにこたえなければならない立場にある。
難しい話ではない。会計割引制度というのは、
クライアントの決算書に、「一定の会計ルールに従っている」旨のチェックリストを税理士名で添付すると、クライアントに対して信用保証協会の保証料率の割引0.1%が適用されるというものである。
保証協会としては、事実と異なるチェックリストはこの効果を認めず、同時に、そのようなチェックリストを複数回提出した税理士のチェックリストは2年間受け付けないとする変更を24年の4月から適用することとした。
税理士に対して、2年間の「利用停止処分」を行うとしたわけだが、この利用停止処分が税理士の間に波紋を投げかけた。
問題の第一点は、税理士本人だけではなく、関与先全体に効力が及ぶこと。
第二点は、本人に通知するだけではなく、税理士会に通知されてしまうこと。
税理士にとって、関与先に不名誉な事実が伝わり、税理士会でも面目丸つぶれといったことで、税理士法上の業務停止処分にも比肩しうるたいへん恥ずかしいことであることはお分かりであろうか。
事実と異なる記載が、「故意過失を問わず」存在するだけで強権の発動がありうるという厳しい書き方になっているため、署名をする際に税理士に躊躇をさせてしまうことになる。
私は責任者として、この件について、かなり広い範囲から意見を頂戴し、情報収集に努めてきたが、当の保証協会側と、税理士側とで大きなギャップが開いていることが一番の問題であるような気がする。
保証協会は、税理士の粉飾関与や職務懈怠を、それぞれ故意と過失と呼んでいるように聞こえる。
ところが、税理士は、経過勘定項目や減損処理、引当金の計上、棚卸の評価などの個別の処理に過失が認定されることを恐れているのである。
おそれた税理士が、「引当金の計上が誤っていたら、やっぱり過失になるのか?」と問いかけると、「それはそうでしょうね」と保証協会の担当者は答える。
奇妙な会話である。傍で聞いていて、まことに不可思議窮まりない会話だと思った私であった。
よくよく考えてみよう。
税理士が税務のみならず会計の専門家でもあることは保証協会が否定するところではない。
その税理士が、税理士ではない保証協会から「引当金の計上がないのはなぜですか?」と質問されたときに、おろおろして「誤っていました」などという場面を想定しているのだろうか?
実に馬鹿げている。私がその税理士ならば、「発生の蓋然性が低く、引き当てる必要性がないと判断したから問題ありません」と、正々堂々と胸を張るであろう。
仮に、詳しい方に突っ込まれたとしても、専門家なら専門家らしく、専門家としての慧眼と信念をもって、無資格者に対して優しく指導して差し上げればよい。
日本が法治国家である限り、誰が、税理士有資格者を会計の専門家として最初から疑うことができようか。
自分を信じ、普段から居住まいを正して、サムライとしての誇りをもった仕事をしているのか。
次に、保証協会に対してもものを言いたい。
保証協会も金融機関のはしくれとして、与信判断を本業としているのだろう。
与信判断を誤ったことを、簡単に税理士のせいにしてはいけない。
チェックリストは、善良なる管理者の注意義務の前提で、税理士がルールに従っていると判断した事実を述べているにすぎない。「会計ルールに従っている」と、税理士は判断したのであって、「この会社が倒産しない」と請け負っているわけではない。
社会は、それぞれの人が、分相応の役割をきちんと果たすことで、ベルトコンベヤーのように効率よく回転する。
自分が自分に応じた仕事をきちんと果たすことが大切だ。一人ひとりが、小さくも尊い歯車ではないか。
私は、自分の仕事のクオリティを信じている。会計担当者たちの業務にも目を光らせている。お客様に魔が射すときも、事前にこれを見抜き、最後の砦で食い止めてみせる。よりよい未来をお客さまに提案してみせる。
これの裏返しで、金融機関や保証協会の方も信じている。
善意や誠意は必ず伝わる。信念はきっと理解してもらえる。
「正義」――私が思う、「正義」は、必ず勝つと信じている。
誤っていると思うこととは、全身全霊をかけて、戦おうと思うのである。
苦しいときもあるが、倒れるまでは決して負けない。
自分の子供たちに、社員たちに、お客様たちに、無様な生きざまを刻みつけたいと思う。
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実況中継―確定申告真っ最中
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確定申告の中間経過。
必死な会計事務所の雰囲気をちょっと伝えられるか。
朝、税務署の法人部門から電話。通ったはずの先日の申告書が、署長のところでストップしたという。「何だと~。」ってなもんで、怒髪、天を衝く。そ こは落ち着いて、担当官に猫撫で声を出す。
異例のことだ。署長はほとんど目をとおすことはないはずなのに。これは、どうしようもない。黙って待つのみ。今 の時期、法人部門は暇なので、余計なことを考えがちだ。
続いて魚津の相続シミュレーション案件。田畑の農業振興地域の確認。山林の開発行為の制限の確認。立木の評価。杉か雑木か。魚津市役所はちょっと冷 たいぞ。氷見市役所は文書でかえしてくれるのに、口頭でしか教えてくれない。怠け者め。高岡市もそうだったな〜。明日がプレゼンだ。間に合って良かった。
社会保険の軽減スキーム。年間、150万円のキャッシュが浮く計算になる。喜び勇んでクライアントにメール。ハッと気づくと会議が終わる時間。今日は月例会議をサボってしまったらしい。
クライアントのラーメン屋へ。昨日の会議の経営改善が実行されているかを現場検証。ああ、美味しい。
その足で別のクライアント。
他社を吸収合併する話。しかし、いきなりベトナムで引ったくりにあって80万円も失った話。保険も助けにならなかったと。
雑損控除です〜。証明書を用意しましょう。
本題に入る。
いわゆる特殊な業界なので、入札の参加資格のアップがポイント。私は合併が得意だ。この会社だけで、十回近く合併を繰り返してきた。その度に強くなり、すでに業界では隠れた権力者に登りつめた。泣く子も黙る影の帝王である。
対象の会社を見ると、気になる点がいくつか。メリットとデメリットを説明し、検討のための資料を要求して帰途に着く。
帰るとまた社保の話。これは消化作業なので一気に片づける。
続いて医療法人の診療報酬改定に伴う変化のシミュレーション。4月になる前に、しっかりと対策を練る必要がある。これは難物だった。パラメータが多すぎて、どうにもまとまらない。目がピクピク痙攣してきたので、一旦止めて家に帰る。
会社にいると、みんなが質問してきて仕事にならないことがある。もちろん、それは良いことなのだけれど、今年の私は溢れた仕事をすべて吸収している。用事は電子掲示板に書いてほしい。愛想を振りまく余裕もないのだ。冷酷非常モード。
子供達と食事をするのは楽しい。からかったり、偉そうに説教したり、2時間ほどが瞬く間に過ぎた。家内に、あなた大丈夫なの~?と聞かれてハッと我に返る。
おもむろに書斎にこもり、愛用のカルキングを開く。カルキングは数学ソフトで、エクセルよりも高度な計算機能を持っている。試行錯誤を繰り返す中 で、閃いた!条件をスライドさせることでパラメータが二つに集約できることを発見。たちまちプログラムが完成。テストをしながら条件を複雑にしていく。気 がつくと速かった。三時間も悩んだのに、三十分で完成。
入院の早見表とやらを依頼されていたので、PDFにしてメールする。
もう一つ、病院の組織変更のプロジェクトスキームを頼まれていたのだけれど、これは申告明けに納期を変えてもらおう。もう限界だ。
ああ疲れた。
小人閑居して不善をなす。私は12月からほとんど遊んでないぞ。毎日がこんな調子だ。
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胸のすくような事件?
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矢のようにすぎる毎日。仕事が毎日やってくる中で滞留する事件も多い。
目下、私を悩ませているのは、巨大な経営改革事案だ。
銀行七行と保証協会を集めて、バンクミーティングを開くこととした。
金額は決して大きくはないが、影響が大きいため、関係各位からひっきりなしに電話が入る。
皆が私に、好き勝手なことをいう。自分をしっかりと持っていないと、呑まれそうな勢い。まさに、仁義なき戦いが、ミーティングを前に、すでに水面下で始まっている。
40年の歴史で、最大の案件と言っても過言ではないだろう。
さて、そんな中で久々に溜飲が下がるような決着をみた事件がある。
ある銀行に頼まれて介入した再生案件であったが、一昨年の七月からかかり、経営を立て直しながら、第二会社方式の変形で事業を法人化する再生スキームを描いた。
これも金融債権者は銀行が六行と保証協会。
各行の保全シェアをめぐる争いに加えて、新設法人の重畳的債務引受のシェア争い。しかし、メインバンクと保証協会の信用を取り付けた私は財務スキームを貫 き切ることができた。最後の難関は税務であったが、税務署で約一ヶ月引っかかっていた申告が、驚くなかれ、最高の形で今日、是認となったのである。睡眠不 足で、税務署にいるときは自分が成し遂げたことが今ひとつピンときていなかったが、車の中でひそかに小躍りすることになったf^_^;)
実はこれで、クライアントが得をする金額は、トータルで一億円を優に超える。経営者を説得し、膿を出し、銀行を説得し、社長を叱咤激励し、一年半越しによ くぞここまで来た。誰も褒めてはくれないが、私は税務署が正々堂々と私を通してくれたことで、報われた気がしたのであった。
明日も頑張ろう。辛いけれど、時にはカタルシスを感じることもある。
戦闘能力が高くなってきているのも間違いない。
再生業務は精神的に辛い仕事である。
うちは変な仕事ばっかり。事業承継が、公的機関から三つ依頼がきているし、協同組合からも一件、依頼が来た。別に合併の案件を二つ抱えているし、離婚に伴う財産分与の後始末の依頼が昨日きた。相続の普通の案件は二件だけで、妙な事件ばかり舞い込むようになってしまった。
景気が悪い中で、まあ頑張っている方なのだろう。もう少し、流されてみるか。
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