宮内オリックス会長のご講演を一列目で聴いた。
勇気の出るお話を聞くことができて、疲れ気味の毎日に
少しリフレッシュのエネルギーを充填した。
懇親会も楽しかったし、新高輪プリンスのお食事もグーだった。
…それはともかく、武富士事件の話をするんだった。(^^;
平成12年に、相続税法が納税義務者について大きな改正をしたことがある。
国外に住所があっても、日本の国籍がある人は、5年間は相続税や贈与税を免れないという変更だ。
簡単に解説すると、こうだ。
平成11年までは、国外に住んでいる人は、国内財産を贈与や相続で取得した場合にだけ、課税されることとなっていたのだが、ここに着目した租税の回避が頻繁に行われるようになっていた。不動産の所在を変えることは不可能だが、株式ならば簡単に所在場所を変えることができる。
さて、武富士のなくなった会長は、創業者としてたいへんな財をなした方だが(良い悪いはさておき)、公認会計士に長男に会社を相続させる節税プランを企画してもらった。
所有する武富士の株をオランダの会社に現物出資して、オランダ会社の株に変える。そして、長男は、香港に住所を移転し、日本の居住者でなくす。
そのうえで、ごっそりとオランダ会社の株を長男に贈与した。
何が起きたか?
オランダ会社の株は、日本国外の財産であり、長男は日本の非居住者であるから、日本の贈与税はかからない!
もう一つある。香港には実は贈与税の制度がないのだ。
長男は、まさしく、無税で実質的に武富士の巨大オーナーに早変わりするのである。
国税庁は、さすがにこれを見逃すわけにはいかなかった。
長男に対して、史上最大、1100億円余りの贈与税本税を課し、さらに180億円近い無申告加算税を賦課したのである。
武富士側も黙ってはいない。すぐに異議申立手続に入り、その後、決着は東京地裁の判断にゆだねられた。
判決は、本年の5月だった。
どちらが勝ったと思います?
一審は、武富士側が勝訴したのです。
国側の主張は、住所は実質的には日本国内であるから、長男は日本の居住者である、というものだった。
公認会計士の指導により、長男は、武富士が香港に作った二つの会社の代表者となり、月100万円のアパートに住み、なるべく香港にいた。5年くらいでほとぼりを冷まして帰ってきたのだが、その間、65%香港に住み、25%東京に住んでいた、という国税の調査結果がある。
途中で、世界各国に出張しているが、その際、直行便を使わず、必ず東京を経由して、出張している。
長男はさびしかったのだろうか?
取締役会の議事録やら、ありとあらゆる資料を調べられており、国税の執念を感じるのだが、
裁判所の判決は冷たかった。
住所がどこか、という問題は、生活がどこで行われていたかで決める。そうだとすれば、実際に香港に住んでいた本件では、住所が国内ということは無理だ。国の判断は、租税回避の意図を強調しすぎて、バイアスがかかってしまっており、採用できない、と一蹴したのである。
まだ、控訴中であり、最終的な結審にはずいぶん時間がかかるだろう。
しかし、お金持ちは結構こういうことをしているのだ。
ハリー・ポッターの松岡女史は、簡単に追徴に応じたそうだが、彼女の場合、別に租税回避の意図があったわけではないのだろう。
キツネとタヌキ?
私はどちらに付こうかな。
権力は嫌いだしなあ。
今年の日税連の公開研究討論会はおもしろそうだ。
各単位会ごとに趣向が凝らされ、例年、結構面白くって、私はできるだけ参加するようにしてきたのだが、2年間の大学院生活の間は参加することができなかった。
今年は、豪華絢爛な東京プリンスのパークタワーだし、東京税理士会は比較的レベルが高い。ましてや今年は税制改正が波乱を生んでいる年でもある。参加しない手はない。北陸税理士会から補助が1万円出るということなので、早速申し込みをしておいたところ、書類が届いた。
ところが、だ。あまりこのような行事に参加したことのない父が、これは面白そうだな、などといいながら、抗議も虚しく、書類を持って行ってしまった。ああ、それは私のものだったのに……。
それはさておき、今日は、所得税法上、もっとも優遇されている公的年金の話をしよう。
今日も国民年金基金から電話があり、入ってください、と勧誘された。私は入れるものなら入りたいのだが、人材派遣会社・ビジネススクールを運営している株式会社アップロードの厚生年金に既に加入済みである。国民年金基金と厚生年金は、ともに基礎年金の二階部分ということで、二重に加入することができないことになっているのだ。
入れるものなら入りたいといった。そう。私は公的年金等には比較的喜んで加入する。なぜ?
それは、総合的に考えて、とても有利で安全な投資先だと思えるからだ。
日本がデフォルトリスクがある?それがどうした。日本が駄目になるときは、資産は全て水泡に帰すのだ。そんなことを考えていても仕方あるまい。
それよりも、掛け金の全てが所得控除となるのだ。さらに、もらうときには大きな公的年金控除があり、税金が安い。これがいかにすごいことかおわかりだろうか。
貯金の全てが必要経費になり、もらうときにも税金が格安だとしたらどうか?そんな制度があるなら、借りれるだけ借りて借金で貯金をする人が増えるはずだ。公的年金を払わない人が多いというが、なぜ払わない?払えないのならともかく、払えるならば何をおいても支払うべきであろう。投資として、これほど安全で率の高い投資はありえない。これこそが、ローリスク・ハイリターンなのである。
世界各国を見ても、ここまで親切な課税システムを採用している国はないという。さもありなん。
このような制度は、他にもある。先述の国民年金基金もそうだ。国民年金の加入者の方は付加年金という制度もある。最大限に入っておこう。さらには、小規模企業共済もおすすめだ。最大掛け金は月七万円で年間八十四万円。これがまるまる所得控除になってしまう。仕事に疲れたら退職して一時金をもらおう。退職所得として、これまたたいへん有利な税制が適用される。
私は政府のまわしものではない。一介の税理士であるが、有利なものは徹底的に利用するべきだと思う。事業者であれば、さらに倒産防止共済という制度もある。これは所得控除ではなくて、そのまま必要経費となる。
貯蓄性がありながら、節税効果のある商品群。これらは政府系の機関の得意技である。民間がこれをやろうとすると、目ざとく見つけてつぶしにかかってくる。生保のガン保険や逓増定期保険などはその典型例だ。官僚国家日本。アービトラージ(裁定取引)は官主導のみがお好みである。
インターネットが発達して、本が少なくなるかと思いきや、巷にはかえって本があふれかえっている。
最近は特に安易な節税対策本などがよく出回っているように思える。
中には面白いものもあるが、大部分はちょっとリスキーなものであることに注意が必要だ。
なぜって、世の中、黒と白がはっきりしていることって少ないのです。
また、すし詰めの満員電車のようなもので、一人が無理に電車に乗ろうとすると、別の入り口から人があぶれて出たりしてしまう。
しっかりとした理念と理論武装をしてから、戦いに挑むべきだと思うのですよ。
さきほどパラパラと読んでいた本の中で、気づいた点を2,3述べてみましょう。
①売上の計上時期を遅らせれば節税ができる?
得意先に頼んで、納品の時期を翌期に繰り延べる方法(販売)、工事進行基準と工事完成基準を組み合わせる方法(建設業)などが書いてありました。
確かに、売上高の計上基準だけからすると、まるまる売上の計上時期をずらす効果があります。それはいいな!と飛びつくなかれ。繰り延べた売上に対応する原価はどうしますか?売上が上がらない以上、在庫は決算に計上しなければなりません。つまり、この方法は、粗利益部分だけに効果が限られているということに注意しましょう。また、得意先との合意のあり方によっては、通謀虚偽表示として脱税とみなされる可能性も十分あります。単純なノウハウテクニックと思ってもらうと困りますよ!
②領収書なしでも必要経費に落とせる
所得税・法人税は、収入から経費損失を控除した残りである「所得」に対して課税がなされます。この「所得」というものは、良くも悪くも実質に従って判断されます。ということは、確かに領収書がなければだめだ、ということはありません。ただ、気をつけなければならないのは、消費税の仕入税額控除については、消費税法上、領収書等の保存が必要条件とされており、原則として領収書がないと控除してはいけないことになっています。領収書がなくても大丈夫だ!などと早合点しないことが必要です。
③慰安旅行は従業員と一緒に行けば必要経費に落とせる?
これも、公式的に考えてもらうと危険なものの一つです。10万円くらいまでは従業員と一緒に行けば大丈夫などと単純な発想はいけません。確かに通達には、4泊5日程度で従業員の50%以上が参加すればよいとされていますが、まずは実質が大切です。形式だけにとらわれず、福利厚生としてレクリエーションが必要であった背景事情などこそ、他人を納得させる真実の重みをもつのです。
規定が小難しく、ついつい公式的にパターン化してしまいやすい税務ですが、本当の正体は「税法」という法律です。そこには内容を読み取りにくい難解な文章が幾重にも連なり、黒と白どころかグレーゾーンがたくさんあるのです。
経験上断言しますが、税務調査などで問題が発生したときは、もっとも強いのは信念に支えられた真実です。正しいことは誰が何といおうと正しいのであり、相手が税務署だろうが、役所だろうが、臆することはありません。小賢しくすり抜けて節税するのではなく、理念をもって、堂々と主張を通しましょう。
いずれにせよ、単純な公式思考では、決して敵を納得させることはできません。節税本はあくまでもヒント。注意して読まれることをお薦めします。