先日、県連会長の代理で、県の商工労働部が主宰する経済懇談会に参加してきた。
金属関係や、経済同友会、繊維関係、支援機関、北陸銀行、政策公庫など、地域を代表する人々がたくさんいる。
発表をうかがっていると、経済は持ち直しているという意見が多数を占めた。
そう。現場を走りまわりながら、私もそう思う。
道路を走る車の量、人々の明るさ、飲み屋の状況、物流の多さ、などなど、体に感じるものは確かに嘘ではない。
オリンピックのたくさんのメダルが、これに輪をかけてくれればすばらしい。
当社も、何とか収入ベース、利益ベースともに昨対100%を超えてきている。
私が全力投球で打ち込んできた三つの事業も、どうやら形になりつつある。
①企業再生、②インバウンド・アウトバウンド、③事業承継、
そして、会社の内外問わぬインフラとしての④IT(ICT)利活用もおもしろい局面にかかりつつある。
①企業再生
中小企業も、金融機関も、支援機関も、弛みきっていた。しかし、ファイナンスの分野が学問的に隆盛を見せ、アメリカ帰りの弁護士やファンドレイザーたちが日本に新しい制度を次々ともたらした。岩原先生や、江頭先生を中心とする東大の商法学者・民法学者たちが、金融法や会社法、信託法などを進化させて、これに応えた。租税法の中里先生は、諸外国からタックス・シェルターを多数伝道した。水野先生や増井先生もアメリカをはじめとする諸外国の租税制度を日本にもたらした。
いまや、企業再生は、大企業ではなく、中小企業のスキームの宝庫である。利害がクリアに対立し、私のような法律が大好きな税理士には仕事が面白くてたまらない。決して不謹慎な意味ではなく、チャレンジングな仕事をしなければ、目的を達成できないから必然的に難しい仕事を任されることになってしまい、崖の上の吊り橋を、荷重を計算しながら荷物を運搬するような仕事をせざるをえない。
当社には、フェニックス・チームと呼ばれるチームがある。最強メンバーを事案に応じて選抜しながら、3人もしくは4人のチームを作って、事案に対処する。ブレインストーミングの中から生まれてくるスキームやプロジェクトの資料などは、私にとってはどれも宝物である。
②海外事案
インバウンドがしばらく多かったが、最近ようやくアウトバウンド事案が見えてくるようになった。
勇気を出せ、中小企業。日本の製造業。
やられているばっかりでいいのか?
売られたケンカは買わなきゃいけないこともある。
家族や社員を守るために、戦うことが必要なときもある。
平和とは、弛むこととイコールではない。
安全とは、保守主義がもたらすものとは限らない。
何もしないこと、チャレンジしないこと、目をそむけること。いずれも経営者の怠慢であると、私は信じている。
私には、コンクリートの世界が、青々としたサバンナに見える。
なぜ、あなたは獲物を捕りに、そのしなやかな体を疾駆させないのか。
負け犬になって、家族を飢えに曝してもいいのか。
③事業承継
相続税の増税法案が2回、衆議院でつぶされた。
軽井沢で、主税局の課長のお話を聞く機会があったが、どうやら財務省はあきらめていないと思われる。
武富士事件では納税者が破産してから1800億円もの収入を獲得することになった。
シティバンクが米国籍を用いた租税回避スキームを作りだし、納税者は国側に勝訴した。
相続税の世界も、条約あさりが当たり前になりつつある。
私は、国籍や居住地を租税回避の道具に使うのは好きではないが、国民にとっては、税金はコストでしかない。
税金が国家による「強制無償収入」であるという本質をもち続ける限り、国民と国家は鋭く対立せざるをえない。
民主主義がどこまで進展したかとかかわりなく、国民にとってはやはり税金は支出でしかないのだ。
さて、事業承継は、国策として法律化され、会社法のアップデートも相まって、たいへん興味深い分野となっている。
税理士でも、相続対策として狭くとらえる方がほとんどのようだが、企業を防衛し、維持存続していくことは、それだけでもたいへんなボリュームのある分野である。
銀行や、支援機関から多数の仕事が寄せられ、たいへんな数の事案が当社に寄せられてきている。
④IT
ひょんなことで、IT系の人々とたくさん知り合いができ、東京で開かれる会合がたくさんになってしまった。この分野の発展は、生き馬の目を抜く経済の発展よりも激しい。民事・刑事に属する分野だけではなく、行政法に関する部分でも興味深い話がたくさんある。もちろん、租税は台風の目だ。特に、消費税は、中里先生が座長になって、サービス受取りの場合の課税を法案化するようだ(日経新聞)。
私は、とりあえず、クラウド、グーグルやフェイスブック、セールスフォースドットコム、といったプログラムやプラットフォームなどの勉強で手いっぱい。自分が使うレベルでどんどん進化させ、会社の効率化と高速化をさらに進める。
1年半で、当社はずいぶん変わったのである。機会があれば、ご説明しよう。
総花的な、当社の方向性の話で終わってしまった。
みんな、元気を出そうね。
私は、愛国心は人一倍あると思っている。
日本が好きだし、周囲の人々を大切にしている。
家族も、同僚たちも、お客様たちも、富山県が、北陸が大好きだ。
大切なものを守るために、私は闘っているのである。
法人企業統計季報平成18年1~3月期調査が財務省から発表になった。
以前より言われていることではあるが、やはり大企業の躍進と中小企業の低迷という図式が成り立ちそうだ。売上高についても17年第4四半期に引き続き、資本金10億円以上の企業は前年同期比7%増。経常利益については19%増である。それに比べて資本金10億未満の会社はパッとしない。売上高はわずかに増加しているものの経常利益に至っては前期比7%減くらいである。
業種でみると、原油の値上がりを受けてか石油石炭の製造業が堅調である。末端のガソリンスタンドが低迷しているのと裏腹で、元売りと消費者の狭間で苦しむ小売りという構図だ。自動車等の製造業は売上は約1割増だが経常利益が70%増となっている。自動車の北米市場が好調であるというのは本当なのだろう。不動産業も引き続き好調のようだ。売上・経常利益ともに20%増加。東京では大型ビルの建設が引き続き強い。その辺を反映しているのだろう。電気機械の伸びもすばらしい。売上は14%増。経常利益に至っては43%増である。富山県内の松下関連企業の動きが活発になっているのが想起される。
どんどん落ちているのは運輸業。やはり原油高に絡むコスト高か。売上も前年割れが続いている上、経常利益の落ちは39%にもなる。他には、製造業で食品・化学が悪く、非製造業では飲食含む販売が不調だ。
設備投資は情報関連を中心に堅調であると思われる。全体で14%の増加。昨今の個人情報保護、機密漏えい事件など損害が大きいので、情報資産に関する設備投資の必要性に迫られているところも多いだろう。背に腹は変えられないといったところで、このような設備投資は今後も堅調に進むだろうと予測している。
借入額の減少が1割程度進んでいるのも特徴だ。現預金なども減少しているので、バランスシートを全体で圧縮している傾向が読み取れる。その証拠に自己資本比率が年々向上している(現在33%)。ムダを省き、スリムで筋肉質な体型に変化させようとしているのである。
感覚的に納得のいく統計結果であった。だが、統計はあくまで統計。企業の業績はもちろんファンダメンタルな業界事情の上に乗っているのであるが、それ以上に、個別の自助努力が何より大切である。中小企業にはつらい時代になったものだ。かつて搾取する立場であった大企業が、今や対等なライバルになってしまったのであるから。